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| 編集長 |
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この作品では、読者にどのあたりを楽しんでもらいたいとお考えですか。
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| 鯨 |
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僕はいつも、まったく読者は想定していなくて、常に自分自身が唯一の読者なんです。自分自身が面白いと思えれば、どれぐらいの数かはわかりませんが、面白いと思ってくれる読者がいるはずだ、ということを信じているんです。自分が面白いと思うものは、冒頭に謎があって、最後までまったく退屈しないでどんどん読める。そして最後にカタルシスがある、「ああ面白かったな」と思ってページを閉じられる。それが理想なんで、それに向かって書いていれば、必ず共鳴してくれる人もいるんではないか、と。
今回の作品は、書く前の想定としては、自分の集大成的なものをもくろんでいました。結果的には、早乙女静香のキャラクターに負うところが非常に大きくなりましたが。書いていて楽しかったことは確かですね。
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| 編集長 |
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それでは、書かれていて一番楽しかったのは、どのシーンですか?
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| 鯨 |
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オープニングの、テレビ局に入ろうとして止められ、「肩書きは美人よ!」と言うシーンが一番最初に浮かんだんです。ですから、このシーンが印象深いですね。
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| 編集長 |
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静香のキャラクターは、どうやって生まれてきたんですか?
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| 鯨 |
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モデルも特にいないですし、『邪馬台国はどこですか?』で初登場したんですが、ごく自然にああいうキャラクターになってしまって。特に細かい設定も考えていませんでした。ある人に、「鯨さんの作品は、どれを読んでも強い女性が出てきて男がそれに振り回されているというパターンが多い。実生活を反映しているんじゃないか」と言われたことがあります(笑)。
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| 編集長 |
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彼女のようなキャラクターは、計算通りにストーリーを動かそうとすると、時々悪戯をしたりしませんか?
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| 鯨 |
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プロットを組んでいるときに、台詞をすべて決めているわけではありませんから、どんなことを言いだすかは、自分でも書くまでわからないですね。意外なことを言ったりして、それで話が少し脱線するということはありますね。どう動いてくれるかを、自分も楽しみながら書いています。
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| 編集長 |
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それでは、桜川東子の方はどうやって生まれたんですか?
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| 鯨 |
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『九つの殺人メルヘン』の構想をしたときには、厄年トリオが先にあったんです。いつも集まって、酒を飲みながらくだらない馬鹿話をしている三人組。それで、対照的な人物を登場させたら作品全体が締まるんじゃないかと考えまして、正反対の若くておとなしい女性を作りました。
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| 編集長 |
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今回も、静香と東子の対比が興味深いですが、その辺はお書きになっていていかがでしたか?
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| 鯨 |
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静香がかなり暴れ者なので、やはり東子とは対照的になりましたね。東子が探偵役なので、静香はいわゆるワトソン役なのですが、ホームズ=東子よりも遙かに目立ってしまっています(笑)。二人を組ませるというのは、割合自然に出てきたんですが、やる以上は、相当気合いを入れてかからないと、とも思いました。二人のキャラクターの魅力が死んでしまうと物語の魅力も死んでしまいますから。
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| 編集長 |
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この作品で鯨さんが試みられたことは、どんなことですか?
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| 鯨 |
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僕は歴史ミステリーでデビューして、本格ミステリーも創作の柱としてて、あとキャラクターで読ませる小説も書いています。三本柱のような感じで。今回、その三つを全て投入して総決算的なものを書いてみたいと思いまして。
歴史ミステリーとしては家光の謎、本格ミステリーとしては九重アリバイと北海道・沖縄の同時殺人、そしてキャラクターに関しては、先ほどお話ししたように、突出してしまいましたが、早乙女静香に代表してもらおうと考えていました。謎解き部分は桜川東子に担当してもらって。
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| 編集長 |
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おっしゃるとおり、九重アリバイが作品の中に登場しますが、アリバイトリックに関するこだわりはお強いですね。
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| 鯨 |
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有栖川有栖さんの『マジックミラー』を読んだときに感銘を受けました。作中のアリバイ分類はかなり完成されていると思ったんです。これは本格ミステリーの実作で使えるんじゃないかと考えて、『九つの殺人メルヘン』を書きました。今回はまた趣向を変えて、いっぺんに九種類のアリバイがあるとしたらどうかな、と。挑戦でしたね。
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| 編集長 |
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ご苦労されたのは、どんなところですか?
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| 鯨 |
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トリック自体ももちろんそうですが、犯人役の描写も難しかったですね。アリバイものですから、最初からではなくても、どこかで犯人が誰かを明らかにしなくてはいけませんから。
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| 編集長 |
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なるほど。まあ、犯人やアリバイトリックに関しては、これ以上はなかなか伺いにくいのですが(笑)。
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| 鯨 |
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そうですね(笑)。ぜひ、読んでご確認いただきたいと思います。北海道と沖縄で同日同時刻に、同一犯人による殺人事件が起こるということは、アピールしておきましょう。
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| 編集長 |
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鯨さんの書く本格ミステリーは、「論理のアクロバット」というよりは「着想のアクロバット」という印象があります。論理自体は平明でわかりやすいですが、持ってくる素材、コンテンツがとても意外で。
鯨さんはトリックを構想されるとき、解決から逆算して考えるのですか、それとも謎を設定してから解決を考えるのですか?
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| 鯨 |
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今までにあったものを越えていきたいというチャレンジ精神が常にあるんです。今まで誰もやったことのないことをやろうと考えていまして。今回も九重アリバイを使ってみようという着想が最初です。毎回というわけではありませんが、チャレンジングな作品を書こうとする場合は、凄すぎる謎の設定をして、そこから逆算して考えていきます。
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| 編集長 |
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作中の徳川家光に関する謎については、どのあたりから構想されたんですか?
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| 鯨 |
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もともとは「ずいずいずっころばし」ですね。わらべうたの謎についても、興味があって調べていたんです。「ずいずいずっころばし」の歌詞の解釈をしているうちに、ある部分で徳川幕府とのつながりを発見したんです。それで、やってみようか、と。
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| 編集長 |
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この作品は、場面のメリハリが効いていると思いました。静香に振り回される三宅の行動や会話をテンポよく書いていきながら、一方で事件の手がかりや謎を読者に的確に伝えています。
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| 鯨 |
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デビュー以来、一貫してこころがけているのが、「読みやすさ」なんです。いかにして読みやすい小説を書くか、ということにはかなりこだわっています。一番気をつけているのはリズムです。同じ文章でも読点の打ち方で、読みやすさが大きく変わってしまいますから。字面だけではなくて、次にどのような展開が待っているか期待してもらうことも、読みやすさにつながります。ですから、小さな謎と、その数ページ後で明らかになるような小さな解決を作っていくようにしています。もちろん、大きな解決は最後まで取っておきますが。
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| 編集長 |
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ファンの方はご承知のことと思いますが、鯨さんの作品はそれぞれがつながっていますよね。今回は、特にそうしたサービスが多いですね。
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| 鯨 |
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そうですね、今回は特に多いですね。もちろん、他の作品を知らなくても、影響がないようには書いていますが、知っていていただけると、より楽しさが倍増するという。ミスコンのシーンは特に、いろいろ出してみました。
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| 編集長 |
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徳川家光の謎と、ミスコンが一緒に登場してくる小説も珍しいですよね(笑)。
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| 鯨 |
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かなり、何でもありですね(笑)。
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| 編集長 |
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今回の登場人物たちは、また活躍の機会が与えられるのでしょうか?
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| 鯨 |
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そうですね、書いていて楽しかったですし、できればまた活躍してもらいたいな、と思っています。
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